2008年9月27日・28日 大阪・新歌舞伎座

いつもは、4回見たら4回分レポートを書きますが、まだ頭が整理できていないので、思い出すままに書いてみます。

なんといっても沓掛時次郎。
この物語のストーリー、歌とわずかな情報で事前に知っていたことは、
「時次郎という人が何かの理由で殺した相手に奥さんがいて、その奥さんの面倒を見ることになったんだけどいつの間にか恋仲になって、でも義理があるから夫婦にはなれない。」

ってこと。


あと、「もう足を洗ってたんだけど、なんかの理由でドスを持つようなことになった。」んで、時次郎は気風の良い人で何かと言うと「いいってことよ。まかせておきな。」となんでも引き受ける男らしい人。
こんな感じの予備知識だけで冬美ちゃんの舞台を見に行きました。

いやぁ、ストーリーにもビックリしたんですよ。
歌と語りからだから若干間違っているかもしれませんが、「時次郎」が斬った相手には身重の奥さんと小さな子供がいて、斬った理由も一宿一飯の恩義。っていうヤクザの掟から。
死に際に、未練が残って成仏できないだろうから、

「この沓掛が面倒をみる。安心して成仏してくだせぇ」

って物語がはじまって、最初の

「いいってことよ。任せておきな」

の部分はこのことを歌っていたようです。
それから、身重の奥さんと小さな子供に少しでもおいしいものを食べさせたい。
旅を続けるうちにすっかり生活に困った時次郎はそんな思いで足を洗ったヤクザ業に戻ってケンカ場に行ってお金を稼いできます。
その間に、残念ながらお絹さん(奥さん)は死産。本人も時次郎の帰りを待ちきれずに死んでしまいます。
死ぬ前に、時次郎への感謝と恋心をひとり告白します。
ケンカ場から帰った時次郎は、せっかくお金を持って帰ったのにすでに絹さんが死んでしまったことを知り、涙ながらに自分もお絹さんが好きだったことをひとり打ち明け、

それでもまた「いいってことよ 任せておきな 男 沓掛時次郎」

と言い、残された坊やとお絹さんのふるさとに向かう。

そんなストーリーでした。

これを歌謡浪曲で歌ったり、お芝居したりで魅せてくれたわけですが説明が難しいなぁ・・・
ストーリーは梅川忠兵衛と同じように先生の語りで最初に聞かせてくれます。
そして冬美ちゃんが登場。
男らしい波柄?着流し風の柄なのかな?姐御風でもあるような、形容はできないですが恐ろしくかっこいい立ち姿で幕が開きます。
髪もビシっと下めにまとめて、カンザシが一本のシンプルさ。立ち姿と緊張感で、もうしびれます。
前奏が鳴り、1番を丁寧に歌います。
先生の語りを受けたあとなので、CDで聞いたときよりも1番の歌詞の意味もよくわかり、時次郎の男らしさ、成り行きとはいえ、「まかせておきな」という歌が頼もしく聞こえます。
ここからは浪曲になり、最初は情景が浮かぶようなゆっくりとした節回し。
次にお絹さんのセリフになりますが、これがもう泣ける。
搾り出すようなか細い声で、震えるようなセリフ。

かなり長いですが、2~3ヶ月の間に苦しい旅をしてきたこと、時次郎への感謝の気持ち、そしてお腹の子供が死んでしまったこと・・・
自分も「時さん」の帰りを待てずにもう死んでしまいそうなこと。
最後に、「私はあなたが好きでした」
という、本人には届かない切ない告白。
そしてお絹さんとしての浪曲。
好きでも一緒になれないつらさ。それでも死ぬ前に燃え上がるような恋をしたということを女冥利に尽きる。と表現します。
すっかり悲しい気持ちになったころ、今度はケンカ場から戻った時次郎のセリフ。
「なんてこったぁ・・・」
からはじまり、間に合わなかったこと、自分もお絹さんが好きだったことを男らしい言葉でやはり絞り出すような、でも今度は男の人が泣くほどに苦しい。

といった情感がヒシヒシ伝わってきます。
そして、「おそかったぁ。おそかったぁ・・・・」とセリフを決めてすぐに
「赤いこよりで結んだドスを 二度とは抜かぬと 決めたのに ・・・・」
と歌につながります。
それはもう・・・苦しく切なくやりきれない悲しみが会場中を占拠し、空気も重い。
そんななか歌いあげる
「いいってことよ 任せておきな 男 沓掛時次郎」
の最後の部分が、かっこよくて。
1番で歌ったときとは重みが明らかに違って、

それでも「いいってことよ」と言う時次郎が本当に「おとこ 沓掛時次郎」って歌詞にぴったりで。

最後はセリフで、残された坊やに「泣くんじゃねぇ!見ろ!浅間山が真っ赤に火を噴いてらぁ!」とかっこよく決めて、坊やの肩を抱くような仕草で幕が降りました。

う~~~ん。
見ないとわかんないですよね。

1度目に見たときは、物語のストーリーの重さに驚き、お絹さんと時次郎の悲恋に驚きつつも悲しみ、時次郎の悲しみをこらえる男らしさに感動し、何より、なんでまた冬美ちゃんはこんなスゴイ演目に挑戦するんだろう。と冬美ちゃんの挑戦魂にまた感動しました。
2回目になると、ストーリーはわかっていたので歌声や節回しというのかな?浪曲部分の声とこぶしが気持ちよく、こう歌ってくれるから感情が伝わってくるのか。技というか、練習するのは大変だろうなぁ。素晴らしい!と。
3回目は座った席が、お絹さんのセリフを言うときの視線の先方向だったことで、石のように固まって動けず、「あなたが・・・好き・・・」のセリフでやられました。
4回目は14列目で見たので、やっと落ち着いて見れて、「冬美ちゃんが演じる沓掛時次郎」という見方ではなく、純粋に登場人物に感情移入して、やっぱり涙ぐんでしまいました。
なんといっても、お絹さんのセリフと、時次郎の最後の「いいってことよ まかせておきな」が悲しく、せつなく、それでいてかっこいい。惚れますよ。時さん。
これまた素晴らしかったぁ(ぼ~~~~~っ・・・回想中・・・)

そして、レモン哀歌・・・

澄んだキレイな冬美ちゃんの歌声がキレイなメロディーを丁寧に歌います。
演奏も、バイオリンはじめ澄んだ音でものすごく気持ちいい。
やさしく語るような歌声あり、愛おしくて仕方のない歌声あり、激しく愛し合ったのに今はもういないという悲しい歌声あり・・・
すべてを通して深く大きく切ない気持ちが伝わってきました。
心が震えるというか、無意識に胸に手を当ててしまうのは何故なんでしょうねぇ。
そうしていないと、心臓が止まりそうなくらい揺さぶられてしまう。
冬美ちゃんが大好きで観に行っているのに、それでも目を閉じて歌声だけに集中してしまう。そんな感覚です。
まぁ、実際にはしっかり目を開けて冬美ちゃんを見ていたわけですが(笑)
「黄色い檸檬をかじるひととき あなたはひととき智恵子に帰る」のときに、黄色い照明がふわぁっと冬美ちゃんに集まるのですが、幻想的で回想的で切ない・・・
何度でも聴いていたい。

そんな歌声でした。

ステージの全体の構成を書いてないですね。

羅生門、祝い酒、冬美のソーラン節のあと、太鼓と尺八の演奏があり大好きな「まつり」、千の風になって。
薄い幕が降りて、二葉先生の語りから沓掛時次郎。
ここで休憩。
これは、冬美ちゃんはもちろんだけど、私たちも休憩が欲しいところだったのでよかったです。
なかなか消化しきれないほどの感動なのです。
私も泣いてしまいましたが、本当に涙したり、幕が降りても呆然としてるお客さんが多かった。
休憩明けは夜桜お七。花道からせりあがってくるピンクの冬美ちゃんのかわいいことったら・・・もう♪
あんなすごい演目をした人と同じ人とは思えない笑顔。
蛍の提灯~ゲタップと続きます。
トークの後にレモン哀歌。
バンドさんのメンバー紹介があって、いつものバイオリンから雪国~駒子その愛~
長めのトークの後に紀ノ川、能登はいらんかいね、火の国の女と続きます。
この火の国の女の最初のキメポーズのときに「ちゅど~ん!」とバズーカーからラメの紙吹雪が2連発で発射され、赤いライトに照らされて会場中に降り注ぐ派手な演出がありました。
1回目はど肝を抜かれて驚き、2回目は塊の紙吹雪が胸に当たって撃たれたのかと思った(笑)
最後はあばれ太鼓でした。

<トーク&ハプニング>

関西のコンサートは本当にお客さんが面白い!
会場の掛け声も様々で、何度も冬美ちゃんは笑い転げていました。

傑作は、土曜の昼の部。
あばれ太鼓の前の締めのトークも終わり、太鼓に向かって歩きはじめるあたりで、客席から
「冬美ちゃ~ん。大阪の芸人で好きなの誰?」
って掛け声(笑)

咄嗟に
「その話、今なんか関係あるか~?」
って切り替えした冬美ちゃんですが、しゃがみこんで笑って立ち直れない・・・

やっと起き上がって
「夜の部までに考えとくわ!だからおっちゃん、夜もきてな!」
と、ものすごくナイスなコメントでまとめていました。
さすが、冬美ちゃんも関西人。
よっぽど調子が狂ったのか、太鼓のタイミングまでずれてしまうほどでした。

土曜の夜は3階席から甲高い声のいつものおじさん。
さんざん面白い掛け声をかけてはトークを中断させていましたが、あばれ太鼓の前になると冬美ちゃんから
「あのおっちゃん、いつも来てくれるんだけど、あばれ太鼓の歌に戻る直前に声をかけられたときには、おっちゃんのキーに合わせちゃって歌を失敗したことあるんです。だからあそこでだけは声かけないでくださいね(笑)」

さらに、太鼓のバチを構える直前にも声をかけられると

「ホンマに気が抜けるわぁ~・・・」

太鼓をたたき終わると「今や!」というように3階のおじさん方向に大きく腕を伸ばして合図(笑)
「右と思えばまた左~」のあとに各方面から「冬美ちゃん」の掛け声が納まると再び3階おじちゃんに腕を伸ばし、今度はマイクを使って

「さぁ、今やで!」

初日は二葉先生もいらして、沓掛時次郎も初披露でとても緊張していた様子でしたが、どんな状況でも客席からの声には打てば響くの切り替えし。
さすがでした。

<まとめ>

長々と書きましたが、まだまだ書き足りないのはもちろんのこと。
いつものことといったらそれまでですが、やっぱり冬美ちゃんのステージはどんなに高い期待を持って観に行ってもそれ以上、想像をはるかに超えた感動があります。
大好きな歌声。
神々しいようなオーラ。
それでいて親しみやすい茶目っ気たっぷりのトーク。
歌に懸ける真剣な姿勢。
女性らしい立ち姿に、どんな男よりもかっこいい立ち姿。
緊張で震えそうな姿があるかと思えば、自信満々などや顔があって・・・

一瞬も見逃せないと思いつつも、そんなステージを積み重ねてきたんだという歴史も感じます。
今回はとても幸せなことに4回もステージを見ることができたのですが、1回ごとにまた大きく羽ばたく冬美ちゃんを一緒に体感することができ、近道なしで一歩一歩今の冬美ちゃんまで歩いてきた人なんだなぁ。

怖くても逃げるのではなく、ひとつひとつ乗り越えてきた人なんだなぁ。と、またまた改めて冬美ちゃんを知れたこと。こうしてステージを見られることの幸せを心いっぱいに感じて帰ってきました。

最後に・・・
会場で冬美ちゃんのお母様と少しお話しができる機会がありました。
4回ステージを見たことを伝えると、間髪入れずに

「幸せやな!うらやましい!」
という言葉が返ってきました。

一番身近で、一番熱心な本当の冬美ファミリーには完敗しました(笑)

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