和歌山市民会館 2009年11月27日

構成変更があってから始めてみるコンサートで、今年最後のコンサート。

 

大正ロマンコーナーでのドレス姿から、アルバム「lovesongs~また君に恋してる~」から3曲をジャケット姿で歌うように変更になっていると聞いたのは2ヶ月程前だっただろうか・・・

 

今年1月から若干の変更を加えながら、進化し続けてきた坂本冬美コンサートツアー2009が最終形としてどのようになったのか、しっかり確認しなくては!と見る前から気合が入る。

 

ボレロのSEから緊張感が高まる。相変わらずばらつくホーン隊に「むむ??」と思う頃、風に立つのイントロに変わって冬美ちゃんに会える悦びと期待感が増す。

 

昼の部はスピーカーでこの大好きな登場シーンが見れなくて残念。夜の部は中央付近だったので会場を見渡しながらゆっくりと堂々登場する「大御所演歌歌手 坂本冬美」を観ることができた。

 

去年の紅白で風に立つを歌った、明るい水色にレインボーが描かれた振袖。顔は演歌歌手らしい笑顔で、会場の隅々までを見渡している。2階席や両端のお客さんまで、全てを確認するように、また何かを感じ取るセンサーを働かせているように1曲目を歌いきる。

こんなときに見せるプロっぽい感じ、とっても頼もしくて安定感があって、応援しよう!という気持ちで会場に行っても、この表情を見ると、「今日も楽しませてもらおう・・・」と受身に変わってしまう。

 

オープニングトークでは「紅白出場おめでとう のびのび歌ってきてね」という内容の垂れ幕が客席から出され、それに答える冬美ちゃん。

冬美ちゃん本人はもちろん、ファンにとっても一年の応援の集大成である紅白出場は毎年発表されるまで緊張するものだ。回数を重ねて周りには絶対。と言われていても、やっぱり発表の付近にはドキドキする。

CDが何枚売れた、ランキングがどのくらい。という数字では現せない判定基準のイベントなだけに、自分は今年一年、精一杯の応援をできたのだろうか。なんて反省しつつ不安な日々を過ごすのだ。

自分だけが良ければよい。という性格ではない冬美ちゃんなだけに、出場が決まっても何かしら引っかかるのも風物詩か・・・

「(果たして私が出場して良いのだろうか。もっとふさわしい人がいるのでは?でも、)選ばれたからには、精一杯歌ってきます!」

という心の中の注釈が読み取れるような迷い。

そんな話し方をする冬美ちゃんを見れば、私たちファンがしっかり応援していかなければ。と再び応援気分が出てくる。

 

そんなトークも終わって2曲目は「祝い酒」 

左右のお客さんに手を振りながら、テレビでは見せない笑顔で20年以上歌ってきた定番のヒット曲を一気に歌い終える。

3曲目は「冬美のソーラン節」。

アジアの海賊のYOSAKOIソーランツアーのおかげで、コンサート以外でも今年は何度か聞けてうれしかったなぁ。

 

演歌よりもロックを感じるリズムと、夏場は♪汗を拭~け拭け 汗を拭け♪の歌詞の後に自分で「あ、それは私か。」と付け加えるバージョンがかわいかったなぁ。

この日はそんなに汗もかいていなくて、着物の中の細い身体が肩や脚までしっかり使って私たちに歌声を届けてくれているのがわかる。

洋服姿で歌うことを見慣れたせいか、着物をきていても冬美ちゃんの中身?はとってもリズムに乗っているんだろうなぁ。と今まで以上に想像できる。

 

「セイヤー!」の掛け声の後、暗転。

いつものように全速力で走って舞台の袖に消えていく。

登場のときの「ベテラン感」とこの全力ダッシュのギャップ。

そうそう。これも冬美ちゃんのコンサートではいつも感じる感覚だ。

 

沓掛時次郎も来年から見られなくなるかもしれないから、気合を入れて二葉先生の語りから聴く。

いつも気になるのは、初めて冬美ちゃんのコンサートに来た人が、この語りや物語のストーリー、または「歌謡浪曲」というものがわかるのだろうか?ということ。

私は、歌謡浪曲も二葉先生のことも、岸壁の母すら知らなかった。

歌の途中でいきなり語り出すものを見たことはあったが、それと自分が見るものが結びつかなかった。

ストーリーも何度も聴くうちにわかったし、教えてくれる人もいたけど、ここまで幅広い年代層がコンサートに集まるようになったのなら、知りたいと思う人には勉強ができるようなコンサートパンフレットが必要なんじゃないだろうか。

 

とはいいつつ、私は常に何も知らされていない状態でコンサートは見たいと思っているので、余計なお世話なのかもしれない。

 

さて、本題。

立ち姿から、男性だったらこんな人が良い。の理想形を冬美ちゃんが演じる。

覚悟ができている潔い時次郎と、はかない恋をする時次郎。どちらも理想形だなぁ・・・(ニンマリ)

 

ミュージカル仕立てのような豪華な効果音やBGMが歌謡浪曲を現代風に感じさせる。

テーマや時代考証は古くても、男らしさ、女らしさは普遍だなぁ。と今更ながら気付かされる。

また、伝統の芸を絶やさないためにするべき努力は、長い道のりなんだなぁ。冬美ちゃんは人気・実力を一過性のものではなく継続的なものだと捉えて頑張っているんだなぁ。と感心しきり。

「凛」とした冬美ちゃんを見たいなら、切れるような緊張感の沓掛時次郎を見るのが一番だと思う。1ミリの笑顔もなく終わる演目に、ただただ拍手をする観客。一流の人を見られた喜びが会場を広がる。

 

 

大正ロマンコーナーとは変わって、バンドさんの席からバイオリンとウッドベースのみが舞台向かって左手に登場。

大人らしい静かな立ち上がりで「また君に恋してる」の演奏が始まった。

 

また君に恋してるのキャンペーンでお馴染みになった細身のパンツにTシャツ、ジャケット姿の冬美ちゃんがゆっくりと登場。

会場からどよめきが起こる。

 

おそらくは、そのスタイルの良さに、おそらくはその着物とのギャップに、おそらくはそのカジュアルな服装に、おそらくはその全てが混ざり合った感嘆の声を気持ちよく聞きながら、冬美ちゃんが軽く微笑んで歌い始める。

その歌声が会場に沁みていく。気持ちいいくらいに目に見えるように波のように冬美ちゃんの声が広がっていく。気持ちいい。とにかく気持ちいい。

ジャケットはレザーだろうか、質感がちょっとかわっていてハードな感じ。色はシルバーグレー。デニムは普段履いているものよりもストレッチが効いて細めのもの。赤いハイヒールのせいか見慣れたデニム姿だけど更にスタイルがよいのが目立つ。中のTシャツは白地で大きなハイヒールがスパンコールで描かれており、ライトに当たってはキラキラと光を反射させている。薄手のラメ入りのストールがジャケットの襟元に添わされていて、一層タテのシルエットを強調している。

髪型は外巻きのセミロングで、最近のキャンペーンと同じと言ったほうがわかりやすいだろうか。

 

ベースの菅井さんと軽くトークをしてから、「恋しくて」「大阪で生まれた女」と続く。

大阪で生まれた女の迫力は、どう言い表したらよいのだろう。

着物で歌う「演歌」からは感じたことのない感覚。衣装のせいも多分にあるのだろうが「素」とか「生」とか「裸」という言葉を「心」という字につければそれを現す言葉になるのではないか。

「素心」「生心」「裸心」そんなものが、とてもストレートに誰の心にも入ってくる。

泣きたくもないのに、泣きたい感情になり、強く心を揺り動かされる。

 

共感でもないけれども、主人公との同化がされるような。そして冬美ちゃん自身とも同化するような、物語上の人を歌う演歌ではなく、今ココに生きている自分を歌われているような、今ココに生きている冬美ちゃんを歌っているような、そんな気持ちになる。

何度聴いても感動が変わらないし、それはCDからでも感じるし、コンサートでももちろん感じられる。赤坂サカスのような不特定多数が行き交う場所ですら、その感動が薄れることはなかった。

きっとこれもまた「坂本冬美の新境地」なのだろう。

 

 

太鼓が用意され、暗転の中がざわつく・・・

あぁ、今年はやっぱりコレだったんだよなぁ。

これからはじまるシビレるであろうアジアの海賊バージョンの冬美ちゃんの登場が待ち遠しい。早く・・・早く見たい!

 

そんな期待感の中、あのイントロが流れ客席に背中を見せているのに圧倒的な存在感の冬美ちゃんが少しずつポーズを変えながら振り向く。

 

「うん。間違いない。私の大好きな冬美ちゃんは今日もカッコイイ」

シビレながら手拍子をして、ヨイヤッサァー!の掛け声を力いっぱいして、顔の前よりも更に高く上げて手拍子をしている腕が疲れるのが心地いい。

このバージョンの冬美ちゃんは間違いなく今年誕生したもので、それをリアルタイムで感じられたことが、改めて幸せなことだと感慨ひとしお。

 

秀秀さんたちに「姐さん口調」で突っ込みを入れる冬美ちゃんは着物のときよりもフランクで、洋服のときよりは演歌っぽい。

袖がめくりあがらないように動く上半身に比べて、ブーツとパンツで楽になった下半身は着物のときよりも大胆にリズムを刻む。

こんなアンバランスに見える動作や衣装が、冬美ちゃんだからこそ着こなせるしかっこよくなる。

 

思うに、去年までの冬美ちゃんじゃなく、来年からの冬美ちゃんじゃなく、正に2009年にこのタイミングで出した曲だからハマッたし、今の冬美ちゃんだからカッコイイんだと想う。

うまくは言えないけど、年齢やキャリアや容姿や出会いや・・・何もかもが気持ちよくピタリとはまっているからかっこいいんだと想う。

 

アジアの海賊の衣装で歌うあばれ太鼓もよい。

 

最初にこのツアーの構成になったときに、冬美ちゃんの太鼓がなくなって寂しく思った方もいたと思うけど、太鼓姿から見える勇ましさやお茶目さにプラスしてかっこよさが加わったあばれ太鼓は、どんな衣装で歌おうと揺るぎようの無い冬美ちゃんの歴史が伝わってくる。

 

風雪ながれ旅やまつりを歌うときの「どや顔」が、今回のツアーではこのあばれ太鼓で出ていると思う。

「これが坂本冬美ですよ。存分に見てください。聴いてください。私、とっても自信があるんですよ。さぁ、どうぞ!」

という気持ちが聴こえてくる歌声と表情。

 

うんうん。一生、ついていきます・・・

 

 

秀秀と宝さんのセッションも回を重ねるごとに迫力と自信を増していて、宇宙一である冬美ちゃんのコンサートで演奏されるにふさわしい。

伝統的だけど新しい。自分たちが自信を持って納得しているもの。そして日々の鍛錬がされているもの。そんな感じが伝わってくるので、冬美ちゃんのコンサートにふさわしいと思います。

 

 

夜桜お七で普通バージョンの坂本冬美にまたまた変身して現れた冬美ちゃん。

 

振袖→時次郎→ジャケット&パンツ→アジアの海賊→夜桜お七 と衣装だけではなく中身の「坂本冬美」も全て別人のよう。

今までは、歌い方や表情など冬美ちゃんの表現力で現していた多面性を、今回のツアーではビジュアル面でも変更したことで、とってもとってもわかりやすくなったし、気持ちよくしっくりと、そしていくつもの坂本冬美を見ることができることを贅沢に感じることができる。

 

司会の冗さんとのトークにプレゼントコーナー。

ここではファンを大切にするお茶目なトークが繰り広げられ、さんざん一流だ!上手い!キレイ!と感じていた観客の「スター」を見る目から「冬美ちゃん!」という親しみやすい一面を見せられまた惹きこまれる。

 

ひとしきり客席が和んだあとに歌うのは、「雪国~駒子その愛」そして、戻ってきた「能登はいらんかいね」、「紀ノ川」と続く。

ここの3曲はこれまた聞き逃せない。

駒子ちゃんも紀ノ川も新曲として発売されたときにツアーでは能登はいらんかいねとセットで歌われていたけれど、そのとき、新曲を歌うことに緊張し、その後の能登はいらんかいねでほっとして伸び伸び歌う冬美ちゃんの歌声は素晴らしかった。

 

今は、この3曲ともが、そのときに聴いていた能登はいらんかいねと同じように響く。

きっとこれが演歌ならではの「自分のものになりました・・・」的な落ち着き方で、歌っていけばいくほどに素晴らしい作品になっていくという過程なのだと、一緒にその経過を感じられることがうれしい。

 

作品そのものの素晴らしさも改めて感じるし、シングルが毎年1曲出されてそればかりをテレビで歌い、カップリング含めて2曲ずつオリジナル曲が増えていく。みたいなサイクルだけでは良い作品が量産できるわけではないんだなぁと思う。

 

冬美ちゃんが真面目に愛情を注ぎ込み、その作品と向き合い、歌いこなせるまで歌い、その歌が思うように表現できるようになっていくのは時間が必要なんだと思う。そうでない歌もあるけれど、演歌の王道のような歌は熟成させながら繰り返し向き合うことで、その世界観が3分間で伝えられるようになるというか、歌といものも育っていくんだなぁ・・・と感心する。

 

カラオケ受けするとか、素人でも歌いやすい、聞きやすい。という楽曲ではなく、「坂本冬美にしか歌えない歌」というのは、こーゆー過程を経て創り上げられてきた作品なんだと、この3曲を聴きながら、その作品自体に感動を受けながら感じた。

 

最後を締めるのは「火の国の女」

 

フルコーラスでスモークやラメの紙吹雪や真っ赤なライトなど、舞台の派手な演出が似合う歌。

この素晴らしさは残念ながらコンサートに来た人にしか伝わらないと思う。

逆に、コンサートに来て、火の国の女が印象に残らない人はいないと思う。

 

これもまた、坂本冬美にしか表現できない強くも女らしく熱く気合の入った作品。容姿含めて冬美ちゃんにしか表現できないだろう。

ブルーの着物に真っ赤なライトが当たり、着物が赤く見える。

歌が終わり、ライティングが変わると、あれ?着物は赤くなかったんだ・・・と思う。

それほどまでに作品に入り込んでしまうし、その世界が視覚からも聴覚からも作り上げられてしまう。

 

何度も書くが、今回の構成で視覚的に表現される冬美ちゃんの多面性は、やっと冬美ちゃんの表現力に演出がついてきた。と思える。

おそらく、冬美ちゃん的には何も変えていないと思う。いつものように当たり前に歌の人物になりきり、いつものように当たり前に心を込めて歌っている。それが他の人にはとても難しくできないことだとは気付いていないようで、いつでも当たり前に一生懸命に歌に真っすぐに向き合っている。

 

初めてコンサートを見た人でも、何度もコンサートを見る人でも感動できるのは、何の解説もなく始まり、終わる1曲、1曲が冬美ちゃんの「感じさせる」表現力で現されているからだと思う。

 

その実力に冬美ちゃんが一番気付いていないことで、きっとこれからも冬美ちゃんはまだまだだ。と思って努力を続けていくのだろう。だから毎年進化し続け、私たちを飽きさせることがない。常に驚きや新発見に溢れ、まっすぐに伝わってくる想いを心に受け、感動させられる。

 

そんな素晴らしいコンサートを今年もたくさん見ることができた私は、宇宙一の幸せモノだ。来年もまた心を空っぽにして、たくさんの冬美ちゃんを感じに行きたいと思う。

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コメント

  1. より:

    臨場感溢れる詳細な熱き心の叫びの様な素晴らしいレポート有難う御座います

    りんちゃんの興奮、正に熱か~~熱か~~ですねビンビン伝わって来ます。
    あまりの熱さに火傷をしたようです。こんな火傷なら大歓迎ですが(笑)
    こんな熱い心の人に支えられた冬美ちゃんは宇宙一の幸せものですね!
    そして宇宙一の素晴らしい歌手、そして宇宙一素晴らしい人を応援出来る我々もまた宇宙一の幸せものですね!

    先日冬美ちゃんのステージに接し今、熱か~~熱か~~ですが来年はモットモット冬美ちゃんのコンサートに行きたいです。皆さんが感じる興奮を私も肌で感じたいそして幸福感を共有出来ればと思います(^_^.)

  2. たらりこ より:

    新年明けましておめでとうございます!
    アジアの海賊の詩入り年賀状を頂いて年頭仕事初めに熱いレポートを読みました!

    ファンのみならず待ち焦がれる次なる更新を期待しております!
    今年も宜しくお願い致します!

  3. りん より:

    たらりこちゃんへ>

    おや。
    珍しい人からコメントが・・・

    フォントが変なんだけどなぜ??と思いつつアップしちゃったよ(笑)

    明治座一緒に行こうね♪